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siyaku blog

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【連載】エンドトキシン便り「第5話 SLP (Silkworm Larvae Plasma) 試薬について」

本記事は、和光純薬工業 試薬化成品事業部開発第一本部 BMS 開発部 BMS センター 勝見 洋一が執筆したものです。

はじめに

前号までカブトガニの血球抽出物を原料としたリムルス試薬、およびエンドトキシンのお話をしてまいりました。今回は、カイコ体液を原料とした SLP 試薬をご紹介したいと思います。

エンドトキシン以外の発熱性物質

微生物由来の発熱性・炎症性物質として、エンドトキシン以外に、リポタイコ酸やペプチドグリカンなどが知られています。ある種のリポタイコ酸がリムルス試薬と反応するという報告もありますが1)、リポタイコ酸、ペプチドグリカンの重量当りのリムルス活性は、エンドトキシンと比較して非常に低いようです。

しかし、その炎症性を考慮した場合、エンドトキシン以外の発熱性物質に関しても混入に注意する必要があると思われます。実際、医薬品原料のペプチドグリカンの管理が重要である事例が報告されています2)。カイコ体液を原料とした SLP 試薬はペプチドグリカンを簡便に検出・定量することができます。

昆虫の生体防御とメラニン層の生成

(1)カイコ体液中のフェノール酸化酵素前駆体(proPC)カスケードについて

昆虫体腔内に侵入したカビの胞子等の異物がメラニン層などにより黒く覆われているのが観察されることがあります。メラニンは昆虫体液内に存在するフェノール性物質である、チロシン、ドーパなどがフェノール酸化酵素(phenoloxidase;PO)により酸化されて生成します。

PO は体液中で不活性型前駆体(proPO)として存在し、微生物細胞壁成分によって活性化を受ける一連の反応により、活性型(PO)となります。本カスケード反応は proPO カスケードと呼ばれており、カイコでは北海道大学名誉教授 芦田・落合らにより、精力的に研究が進められてきました。

カイコ proPO カスケードは微生物細胞壁成分により活性化を受けるという点で、カブトガニの体液凝固反応と類似しており、細菌の細胞壁成分であるペプチドグリカン、また真菌類の細胞壁成分である β-1,3-グルカンによって活性化を受けます。proPo カスケードは、重要な生体防御機構のひとつと考えられています。

(2)微生物細胞壁成分

微生物細胞壁成分について詳しくみてみましょう。グラム陰性細菌では、細胞膜の外側に薄いペプチドグリカン層、ペプチドグリカン層の外側にエンドトキシンからなる外膜が存在します。一方、グラム陽性菌では、細胞膜の外側に分厚いペプチドグリカン層とリポタイコ酸が存在します。真菌では、キチン、マンノプロテイン、β-1,3-グルカンからなる細胞壁が存在します3)

カイコ proPO カスケードは、ほとんど全ての細菌・真菌の細胞壁に含まれる成分、ペプチドグリカン、β-1,3-グルカンと反応するということになります。

SLP 試薬

(1)SLP 試薬

弊社朝日らにより、カイコ proPO カスケードを利用した微生物細胞壁検出試薬である SLP 試薬が開発され、現在に至っています。SLP 試薬はペプチドグリカン、および β-1,3-グルカンを定量・検出可能で、マルチタイプの SLP 試薬セットとシングルタイプの SLP-HS シングル試薬セットがあります。

SLP 試薬セットはプレート法とトキシノメーター法による測定、SLP-HS 試薬セットはトキシノメーター法による高感度測定が可能です。リムルス試薬はエンドトキシン、β-1,3-グルカンを定量・検出可能ですが、SLP 試薬は微量のペプチドグリカンを簡便に定量・検出可能という点が特徴です。

尚、SLP 試薬はエンドトキシンとはほとんど反応しません4)

(2)SLP 試薬セットを用いたプレート法測定

LOE-05_01.pngSLP 試薬セットの検出感度は 30℃、60 分間のプレート法測定において、β-1,3-グルカン 6.3~50 pg/mL、ペプチドグリカン 0.6~2.5 ng/mL です。反応生成物のメラニンは、黒色のため、目視でも反応の確認が容易です。

反応例を図 1 に示します。検討に用いた試薬ロットでは β-1,3-グルカン 12.5 pg/mL、ペプチドグリカン 1.25 ng/mL から、反応後に黒変しているのを確認できました。


カイネティック測定が可能な恒温プレートリーダーを用いた測定を紹介致します。

プレート法では、図 2 に原理を示すオンセットタイム法により、定量測定が可能です。標準濃度が高いほどオンセットタイムが短くなります。図 3 に β-1,3-グルカン(カードラン)標準とペプチドグリカン標準に対する用量反応性を示します。

LOE-05_02.png

まとめ

SLP 試薬によってペプチドグリカン、β-1,3-グルカンを簡便に検出・定量することが可能です。今回、SLP-HS に関してはあまりお話しできませんでしたが、また次の機会に詳しくご紹介させていただきます。

参考文献

1) Baek L, et al. (1985) Interaction between Limulus amebocyte lysate and soluble antigens from Pseudomonas aeruginosa and Staphylococcus aureus studied by quantitative immunoelectrophoresis. J Clin Microbiol., 22(2) : 229-237.
2) Martis L, et al. (2005) Aseptic peritonitis due to peptidoglycan contamination of pharmacopeia standard dialysis solution. Lancet., 365(9459) : 588-594.
3) Malanovic N., Lohner K. (2015)., Gram-positive bacterial cell envelopes : The impact on the activity of antimicrobial peptides, Biochim. Biophys. Acta., 1858(5) : 936-46.
4) Tsuchiya M., Asahi N, et al. (1996) Detection of peptidoglycan and β-glucan with silkworm larvae plasma test. FEMS Immunol. Med. Microbiol., 15, 129-134.

関連製品

SLP 試薬セット

第6話 ペプチドグリカンについて

第4話 エンドトキシン(LPS)の不活化と除去

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