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siyaku blog

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【連載】Talking of LAL「第62話 アメリカのカブトガニ事情」

本記事は、和光純薬時報 Vol.74 No.1(2006年1月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第62話 アメリカのカブトガニ事情

今回は久しぶりにカブトガニの話題です。アメリカのカブトガニの話題については、第 46 話でもお話しました。今回は、カブトガニの最近の話題の他、その経済効果にも触れてみたいと思います。

カブトガニの数が減ってきているため対策が必要とのことでいろいろな動きがあったのは 1990 年代の後半のことです。2001 年には、デラウエア湾の海域にカブトガニの保護区が設けられ、その他の州でも種々の規制が行われています。カブトガニが影響を及ぼす産業として、野生観察やバードウォッチングなどの観光業、ウナギや貝の養殖業、そして LAL 産業が挙げられています。

少し古いデータになりますが、2000 年 4 月に Industrial Economics 社 が U. S. Fish and Wildlife Service の経済部門のために作成した報告書 1)によると、地域への経済的貢献は、観光業(メイ岬、ニュージャージー州)で 7 百万ドルから 1 千万ドル、貝の養殖業で 1 千百万ドルから 1 千 5 百万ドル、ウナギの養殖業で 2 百万ドル、LAL 産業で 7 千 3 百万ドルから 9 千 6 百万ドルと試算されています。

観光業はメイ岬のみの試算で、バードウォッチングやカブトガニ産卵観察などに関連した産業です。その他の地域を入れると、もう少し大きい経済効果になるかもしれません。

バードウォッチングの対象は、コオバシギ(red knot)、ミユビシギ(sanderling)、キョウジョシギ(ruddy turnstone)など、海岸にすむ渡り鳥です。これらの鳥は、冬の間過ごした南アメリカから繁殖地の北極圏へ移動する際、デラウエア湾に立ち寄りカブトガニの卵を食べて栄養をつけていくというのです。

カブトガニの卵はこれらの渡り鳥に必要であり、産卵に訪れるカブトガニの数が減るに連れて渡り鳥の数が減少しているという理由で、カブトガニの規制が始まったわけです。

カブトガニの捕獲規制は、主に養殖用の餌を目的に捕られる場合を対象としています。LAL 産業用のカブトガニについては、捕獲区域が定められていたり報告義務があったりしますが、その数に特に制限はありません。LAL 産業では採血後に捕獲した場所へカブトガニを戻すことになっており、その 90% 程度が生き残ると言われています。

また、観光業と LAL 産業はカブトガニなしでは続けていけないのに対し、餌は必ずしもカブトガニでなくてもよいということもあって、このような規制と決められたのかもしれません。

さて、最近のカブトガニの数はどうなっているのでしょう。2005 年 6 月 10 日のワシントンポスト紙には、デラウエア湾近郊に1千万匹程度のカブトガニがいるという意見とバージニア工科大学の調査で新しく成長したメスのカブトガニが 2001 年から 2003 年の間に 86% にまで減ったという記事が載っていました。

また、2005 年 11 月 18 日に Atlantic State Marine Fisheries Commission(www.asmfc.org)が発行した Memorandum に Horseshoe Crab Technical Committee の報告では、デラウエア湾の調査で産卵に来るカブトガニの数は安定しているか少し減っているが、未熟なカブトガニの数は 1998 年以降最近 2 年間が最も多くなっているとのことです。このことは、将来成熟したカブトガニの数が増える可能性を示唆していて、良い傾向といえます。

前出のワシントンポスト紙によると、コオバシギの数は 20 年前には 10 万羽いたのに、2004 年には 13,315 羽だったとのことです。鳥をずっと観察してきた人にとって、この問題は非常に大きいのだと思います。

ただ、自然界の出来事の原因を単一の事柄に求めることには無理があります。もちろん、渡り鳥の数の減少の原因がカブトガニの減少だけであると考えている人はいないとは思いますが、環境汚染や環境破壊などの他の原因も調査する必要があると思います。筆者は、こちらの方面について何も調べていないので何とも言えませんが。

いずれにしても、捕獲区域の制限や報告の義務などが生じたとはいえ、LAL 産業の重要性は認めた上で、アメリカ東海岸の規制は進んでいるようです。カブトガニを殺してしまう餌用のカブトガニ捕獲を制限していくという流れです。これは、LAL の原料を今後長年にわたって確保していく上で、どちらかというと良い方向のように思えます。

強力な次世代のエンドトキシン測定法が見えていない現在、なんとかカブトガニを保護しながら、うまく献血活動を続け、より良い LAL 試薬を供給していきたいものです。

参考文献

1) Michelle M. Manion et al . : "Economic Assessment of the Atlantic Coast Horseshoe Crab Fishery" (Prepared for Division of Economics, U.S. Fish and Wildlife Service, prepared by Industrial Economics, Inc.), April 7 (2000).

第63話 プラスチック製品とエンドトキシン試験

第61話 SLP試薬の応用(その3)

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