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siyaku blog

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【連載】Talking of LAL「第57話 高感度エンドトキシン測定の応用」

本記事は、和光純薬時報 Vol.72 No.4(2004年10月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第57話 高感度エンドトキシン測定の応用

比濁時間分析法や比色法を用いると、かなり低濃度のエンドトキシンが測定できるようになっています。本シリーズでも、水中のエンドトキシンの測定の話題を取り上げ、試料の添加量を調整することでトキシノメーター法による 1EU/L のエンドトキシンの検出が 90 分程度で行えること、また、試料中のエンドトキシンを濃縮できるパイロセップ法では 0.1EU/L 以下のエンドトキシンの検出が可能であることをご紹介しました(第21話1))。

トキシノメーターの場合、試薬自体が自然に活性化を起こさない試薬、いわゆるブランクの安定な試薬を用いると、測定時間を延長すればするほど低濃度までエンドトキシンの測定が可能となります。

今回は、この性質を利用した血中エンドトキシン測定の応用例をご紹介しましょう。

血中エンドトキシンの測定は、グラム陰性菌感染症診断に有用であることが期待され、検討されてきました。1980 年代から 1990 年代前半にかけて、主に合成基質法を用いた測定が検討され、迅速診断に期待が持たれましたが、β-グルカンにも反応するリムルス試薬を使用していたため、その結果に疑問が持たれるようになりました。

その後、エンドトキシン特異的試薬を用いた測定が主流になると血中エンドトキシンの陽性率が低下しました。血中エンドトキシン測定には、血液中に存在する測定妨害物質を不活性化する必要があります。

妨害物質の不活性化は、血液(血漿)の前処理によって行われ、種々の方法が開発されています。なかなか完全な前処理法というものはないのですが、筆者らは、簡便な操作で処理が行え、ある程度良い回収率の得られる希釈加熱法を採用しています。操作が簡便であることは、エンドトキシン汚染を防ぐという面からも非常に重要です。

筆者らが開発した界面活性剤を用いた希釈加熱法で血漿を前処理し、エンドトキシンに特異的なリムルス試薬とトキシノメーターを用いてエンドトキシンを測定する方法では、通常用いられている 5pg/mL をカットオフ値とすると、グラム陰性菌感染症を発見できる確率(診断感度)が 56%、陰性の時にグラム陰性菌感染症でない確率(診断特異度)が 99% との結果を得ており、グラム陰性菌感染症を発見するより、否定することに優れている方法と思われます2)

同じデータを用いて、カットオフ値を 1pg/mL まで下げると、診断感度は 72% に上昇します2)。そのかわり、診断特異度は 81% まで下がります。

血漿の前処理時の希釈倍率は 10 倍です。使用しているエンドトキシン 1pg は約 0.007EU ですから、血漿中の 1pg/mL のエンドトキシンを測定するためには、その 10 分の 1 である 0.0007EU/mL を検出する必要があります。

最近では、使用する器具も吟味され、測定技術も向上してきましたから、器具や操作からの汚染は少なくなりました。それに伴って、血中エンドトキシンの測定も正確に行えるようになってきたのですが、エンドトキシンの検出率も下がったように思えます。

血中エンドトキシンの上昇が予想されるグラム陰性菌感染症例でもエンドトキシン値が低いことがありますし、健常人血漿からエンドトキシンが検出されることはほとんどありません。それでは、どれくらい低い濃度を測定すると健常人における血中エンドトキシン濃度が見えてくるのでしょう。

筆者らは、トキシノメーターの測定時間を延長すれば低濃度まで検出できるという特徴を利用して、健常人血漿中のエンドトキシン測定を試みました2)。すなわち、前処理した健常人血漿を 999 分間測定してみたのです。

74 人の健常人の血漿を測定したところ、平均のゲル化時間は 690.3 分、最大 999 分以上、最小 79.2 分、標準偏差 191.6 分でした。690 分のゲル化時間から検量線の外挿によってエンドトキシン濃度を求めると、0.06pg/mL(0.72EU/L)となりました。

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実際にこの方法を臨床研究に応用した例が報告されています3)。八重樫らは、健常人 66 名、感染症群 31 名、非感染症 SIRS 群 40 名について、測定時間を延長したエンドトキシン測定を行い、感染症群が他の群と比較して有意に高かったと報告しています。カットオフ値を 1.1pg/mL に設定すると、診断感度 81.3%、診断特異度 86.1% となっており、有用な検査になる可能性が示唆されています。

問題は時間がかかることですが、この点も実際に測定するべき濃度が明らかになってくると、解決されていくことと思われます。

血液中にエンドトキシンが存在することは異常事態ですから、生体はこれに反応してエンドトキシンを抑えにかかると思われます。このような状態は定常的でなく、常に変化していると思われますから、その測定も困難が予想されます。

今後、エンドトキシン測定技術がさらに向上し、エンドトキシンの血中動態が明らかにされることを期待しています。

参考文献

1)土谷正和:和光純薬時報,63(4), 16(1995).
2)土谷正和:「エンドトキシン研究5-研究と治療の進歩-」, p.17, (医学図書出版)(2002).
3)八重樫泰法 他:エンドトキシン血症救命治療研究会誌,7, 25(2003).

第58話 リムルス試験のバリデーション

第56話 再認識されるペプチドグリカン

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