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siyaku blog

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【連載】Talking of LAL「第40話 エンドトキシンと Toll-like receptor」

本記事は、和光純薬時報 Vol.68 No.3(2000年7月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第40話 エンドトキシンと Toll-like receptor

今回は、エンドトキシンの細胞への作用に関する最近の知見についてご紹介したいと思います。

血管内に侵入したエンドトキシンは、LPS Binding Protein(LBP)と結合し、白血球膜上の CD14 まで運ばれます。そして、膜上の CD14 にエンドトキシンが結合すると、炎症性サイトカインの産生が起こるというのが、これまでのエンドトキシンによる炎症の理解でした。

しかし、CD14 は Glycosylphosphatidyl inositol(GPI)アンカータイプのタンパク質で、細胞内へシグナルを伝えることができません。このことから、白血球膜上には別のエンドトキシン受容体があると考えられてきました。

最近、この分野に関連して、国内外で盛んに研究されているのが、Toll-like receptor(TLR)です1,2)

Toll は、ショウジョウバエの発生における背腹軸の決定に必須の因子としてクローニングされました3)。さらに、このタンパク質は、真菌や細菌の感染に対する特異的な抗菌物質の産生にも、重要な働きをしていることがわかってきました4)

最近、Toll のヒトホモログとして TLR が発見され、すでに 6 種類が報告されています2)。この中でエンドトキシンに関連すると思われる TLR が、TLR2 と TLR4 です。

米国の研究グループは、TLR2 を発現させた細胞がエンドトキシンに対する反応性を獲得すること、その反応性は CD14 の存在で増幅されることを報告しています5)。さらに、TLR4 を発現させた場合は、TLR2 を発現させた場合のようなエンドトキシンに対する反応性の獲得は認められなかったことから、エンドトキシンのシグナル伝達を担う受容体は TLR2 であるとしています。

米国の研究グループは、TLR2 を発現させた細胞がエンドトキシンに対する反応性を獲得すること、その反応性は CD14 の存在で増幅されることを報告しています5)。さらに、TLR4 を発現させた場合は、TLR2 を発現させた場合のようなエンドトキシンに対する反応性の獲得は認められなかったことから、エンドトキシンのシグナル伝達を担う受容体は TLR2 であるとしています。

一方、エンドトキシン低応答マウスとして知られている C3H/HeJ で、TLR4 遺伝子の欠損が認められたことから6)、TLR4 がエンドトキシンに対する反応性に関与している可能性が示されました。さらに、日本の研究グループが、TLR2 並びに TLR4 のノックアウトマウスを作製し、各種菌体成分に対する反応性を解析しました2)

その結果、エンドトキシンに対する反応性は、TLR2 ノックアウトマウスでは野生型と変わらず、TLR4 ノックアウトマウスで消失しました。この結果は、エンドトキシンの受容体が、TLR2 ではなく、TLR4 であることを示しています。

エンドトキシンの真の受容体が TLR2 か TLR4 かは、まだ結論がでておらず、今後世界的に論議が盛んになると思われます。エンドトキシンに携わってきた我々にとっても、なかなか興味深いところです。この話題については、欧州/日本チームと米国チームのバトルということになるのでしょうか。

jiho_68-2_TOL_01.png 前出の日本の研究グループは、TLR2 がペプチドグリカンを認識すること、TLR2 及び TLR4 の細胞内シグナル伝達機構に必須の因子が MyD88 であることなども解明しています。海外の研究者たちは、CD14 がエンドトキシンのみならず、ペプチドグリカンをはじめとする細菌細胞壁成分を認識することを報告しています。

エンドトキシンが最も強い生理活性物質の一つであるという認識に変化はありませんが、実際の生体内反応は種々の物質が関与した複雑系であり、エンドトキシンの活性自身も修飾された形で現れてくると考えるべきでしょう。

ペプチドグリカンや β-グルカンによるエンドトキシン活性の促進、細菌が持つリポタンパク質によるサイトカイン産生の誘導など、以前から話題になっていたことが、まさに分子生物学のレベルで解明されようとしています。

これからはエンドトキシンだけを注目するのではなく、ペプチドグリカンやリポタンパク質など、他の微生物成分も考慮した検討が必要になってくるように思われます。

参考文献

1) 赤司祥子, 三宅健介: Molecular Medicine, 36, 488(1999).
2) 竹内理, 審良静男: 実験医学, 18, 343(2000).
3) Hashimoto, C. et al. : Cell, 52, 269(1988).
4) Lemaitre, B. et al. : Cell, 86, 973(1996).
5) Kirschning, C. J. et al. : J. Exp. Med., 188, 2091(1998).
6) Poltorak, A. et al. : Science, 282, 2085(1998).

第41話 エンドトキシンショック

第39話 非特異反応の観察方法

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