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siyaku blog

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【連載】Talking of LAL「第14話 エンドトキシン試験用水」

本記事は、和光純薬時報 Vol.62 No.1(1994年1月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第14話 エンドトキシン試験用水

リムルス試験はカブトガニ血球から調製したリムルス試薬(LAL)を用いて行うエンドトキシン検出法ですが、この試験において非常に重要な役割を担っているのが「エンドトキシン試験用水」です。ふだん何気なく使っている水ですが、リムルス試験における水の品質は、試験結果に大きな影響を与えるのです。今回は、この「水」について考えてみましょう。

リムルス試験に用いる水としてまず必要なことは、LAL を活性化する物質、すなわちエンドトキシンやβ-グルカンが含まれていないことです。この条件は蒸留でほぼ達成できるようですが、蒸留した後の操作、環境、容器からの汚染に注意する必要があります。

微量のエンドトキシンによる汚染の場合は、オートクレーブ等の加熱処理でエンドトキシンを失活させることができる場合が多いようです。エンドトキシンは耐熱性の毒素として知られておりますが、第 2 話でもお話ししたとおり、低濃度の溶液では熱による失活が起こります。

一方、β-グルカンの水溶液は、エンドトキシンに比べ、熱に対して非常に安定です。すなわち、汚染したβ-グルカンの活性を加熱処理で除くことはたいへん難しいのです。このことから、β-グルカンの「エンドトキシン試験用水」への汚染には十分注意する必要があります。

「エンドトキシン試験用水」に関して、もう一つ重要な注意点があります。それは、「使用する水はエンドトキシンの活性を変化させてはいけない」という点です。

例えば、使用する水に微量の鉄イオンやアルミニウムイオンが混入している場合、エンドトキシンの活性が低下する可能性があります。第 10 話でお話したように、µM オーダーの鉄イオンやアルミニウムイオンは、エンドトキシン水溶液の活性を 50% 以下まで低下させました。

実際、市販のアンプル入り注射用水の中にはエンドトキシン活性を低下させるものがあり、筆者らも、アンプル入り注射用水で希釈したエンドトキシンの活性が 100 分の 1 以下になるという現象(20 EU/mL に調製した溶液の活性が 0.2 EU/mL 以下となった)を経験しております(未発表データ)。

このエンドトキシン活性の低下が、リン酸緩衝液の共存により抑制されたことから、エンドトキシン活性の低下の原因は、やはり金属イオンであると思われます。筆者らのグループが見いだしたこの現象は、リムルス試験における標準エンドトキシンの問題と大きく関わっており、非常に重要と考えられます。しかし、「エンドトキシン試験用水」をとりまく現状としては、「エンドトキシンフリーであること」だけが重要視され、「エンドトキシン活性への影響」に注意が払われていない場合が多いようです。

「エンドトキシン試験用水」という言葉は、日本薬局方1)に「医薬品各条, 第二部「注射用水」ただし、本品 0.10mL につきエンドトキシン試験法を準用し、試験を行うとき、試験管の内容物は凝固せず流れ落ちるもの」と定義されております。

「注射用水」のエンドトキシンに対する規格値は 0.25 EU/mL 以下ですから、「エンドトキシン試験用水」もこれと同じと考えることができます。しかし、使用する LAL の感度を局方は指定していないことから、「感度の高い LAL と共に使用するエンドトキシン試験用水のエンドトキシン規格値は、さらに低く設定する必要がある」ということに含みをもたせた表現と考えることもできます。

「エンドトキシン試験用水」は JIS2) にも収載されており、「エンドトキシン含有量が 0.006 EU/mL 以下のもの又は個別規格に定義するエンドトキシン濃度以下のもの」とされています。JIS には、ゲル化転倒法だけでなく、比濁時間分析法や合成基質法も収載されており、これらの方法に対応するために、エンドトキシン試験用水のエンドトキシン規格値がやや厳しくなっていると思われます。

米国薬局方3)では、リムルス試験(Bacterial Endotoxins Test)に使用する水を「LAL Reagent Water」とし、「注射用水か又は使用する LAL と反応が認められないもの」と定義しています。また、ヨーロッパ薬局方4)でも、同様に定義された水を「Water LAL」としてリムルス試験に使用しています。

参考文献

1) 第十二改正日本薬局方解説, B-529, 廣川書店, 東京(1991).
2) 生化学試薬通則(JIS K 8008), p.23, 日本規格協会, 東京(1992).
3) The United States Pharmacopeia 22th, The National Formulary 17th, p.1493-1495, Pharmacopeial Convention Inc., MD (1989).
4) European Pharmacopoeia, V. 2. 1. 9., Maisonneuve S. A., France (1987).

第15話 プラスチック用具

第13話 カブトガニ

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