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siyaku blog

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【連載】Talking of LAL「第3話 LAL の特異性」

本記事は、Wako News No.4 (1991年3月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第3話 LAL の特異性

LAL (Limulus amebocyte lysate) がエンドトキシンのみならず、β-1,3-グルカンにも反応することは本シリーズ第1話でお話した通りです。1981年に Kakinuma らはカルボキシメチル化したβ-1,3-グルカン(CMPS)が LAL に反応することを報告し1)、同年、Morita らはβ-1,3-グルカンがエンドトキシンとは別の経路で LAL を活性化することを報告しております2)

LALcascade.jpgさらに岩永らのグループによって明らかにされた LAL の反応機構は図 1 の通りです3)。また、Pearson らは血液透析器から発熱性を持たない LAL 反応物質(LAL-RM)が溶出することを報告し、これがβ-グルカンである可能性についても言及しております4)

一方、Söderhäll らは CMPS が LAL に反応することは認めながら、ラミナリン及びポリミキシン B を用いた実験から、天然のβ-グルカンは LAL に反応しないと報告しております5)。Hodes らは、日本製の LAL 試薬(TAL)と米国製の LAL の真菌の抽出物に対する反応性を調べ、TAL は真菌抽出物に反応するが LAL は反応しないと報告しております6)。また、Bayston と Cohen は、彼らの総説の中で偽陽性について触れ、臨床上で偽陽性物質が混入することは希であり、主な原因はエンドトキシンの混入であるとしております7)

このように、日本ではほぼ受け入れられた感のある LAL のβ-グルカンに対する反応性について、海外では否定的な意見もあるようです。この原因として、海外のリムルステストの中心が半定量的なゲル化転倒法であること、市販の LAL の中にはβ-グルカンに対する反応性の低い商品があること等が考えられます。

筆者らは、トキシノメーターET-201(和光純薬)を用いて LAL の活性化における反応タイムコースを解析することにより、エンドトキシンとβ-グルカンが異なった反応を示すことを明らかにしました8)。すなわち、LAL とエンドトキシンの反応タイムコースは反応のラグが長く、変化が急激に起こるのに対し、LAL とβ-グルカンの反応はラグは短いが、変化は穏やかであるという特徴が認められたのです。

そして、LAL とβ-グルカンの反応タイムコースは、ポリミキシン B の添加により影響を受けませんでした。ポリミキシン B はエンドトキシンのリピド A 部分に結合し、その活性を阻害するといわれておりますが、確かにエンドトキシンと LAL の反応は阻害されました。また、筆者らは、大過剰のカルボキシメチル化カードラン存在下で、β-グルカンと LAL の反応は阻害されるが、エンドトキシンと LAL の反応は影響を受けないことを見いだしました9)

当社のエンドトキシン特異的 LAL 試薬(リムルス ES-テストワコー)は、この原理を利用したものです。いずれにしても、β-グルカンは、エンドトキシンと別の経路でLAL と反応すると考えられるわけです。

この様な状況ですから、「LAL がβ-グルカンに反応する」という意見が世界的に認められているわけではありません。しかし、この意見を否定する側のデータに比べ、岩永らのグループをはじめとする肯定派のデータは、高度の技術を駆使し、より詳細であると思われます。もちろん筆者は、「LAL がβ-グルカンに反応する」ことを実感しており、信じている次第です。

読者のみなさんも一度文献をひもとき、追試をされてはいかがでしょうか。

参考文献

1) Kakinuma, A. et al. : Biochem. Biophys. Res. Commun., 101, 434 (1981)
2) Morita, T. et al., FRBS Lett., 129, 318 (1981)
3) 中村隆範ら:日細菌誌、38、781 (1983)
4) Pearson, F. C. et al. : Endotoxins and their detection with the Limulus amebocyte lysate test(Eds. : Watson, S. W. et al.), p 247 Alan R. Liss, Inc. : New York (1982)
5) Söderhäll, K. et al. : Biol. Bull., 169, 661 (1985)
6) Hodes, D. S. et al. : J. Clin. Microbiol., 25. 1701 (1987)
7) Bayston, K. F. and Cohen, J. : J. Med. Microbiol., 31. 78 (1990)
8) Tsuchiya, M. et al. : Chem, Pharm, Bull., 38. 2523 (1990)
9) 土谷正和ら:日細菌誌、45、903 (1990)

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