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siyaku blog

ー 研究の最前線、テクニカルレポート、
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【テクニカルレポート】光塩基発生剤(WPBGシリーズ)

本記事は、和光純薬時報 Vol.81 No.3(2013年7月号)において、和光純薬工業 化成品研究所 酒井 信彦が執筆したものです。

UV_radiation_400.jpg

1. はじめに

UV(紫外線:Ultra Violet)を利用した化学反応は古くから知られており、さまざまな分野で広く応用されている。中でも、UV 照射によってラジカルや酸などの化学種を発生し、モノマーを重合もしくは架橋させて硬化樹脂を形成する技術は、電子産業、塗料、インキ、接着剤、封止材の分野で幅広く利用されている。硬化が迅速であるため生産効率を飛躍的に向上できることや、UV 照射部分にのみ選択的に微細な加工を施せるなどの理由から、今や産業界にはなくてはならない技術となっている。ここでは UV 照射によって塩基が発生する PBG(光塩基発生剤:Photo Base Generator)とその応用について紹介する。

2. 開発目的

アミンを用いた樹脂の硬化系は種々知られているが、代表的なものにエポキシモノマー(オリゴマー)の架橋反応が知られる。架橋反応を行う場合、エポキシモノマーとアミンの 2 液を使用前に混合する処方が一般的であり、混合物の保存安定性が低い課題があった。

一方、UV 照射によってエポキシモノマーを硬化させる技術として、光酸発生剤から発生する強酸を用いる方法が既に知られている。本法は迅速に硬化できる優れた手法だが、残存する強酸によるポリマーの変性や金属基板の腐食が課題となっていた。

これらの課題を解決すべく、東京理科大学・理工学部の有光准教授と共同で PBG の製品開発を行った。

3. PBG の分類

吸光団や発生する塩基が異なるさまざまなタイプの PBG が開発されているが、いずれもも非イオン型 PBG とイオン型 PBG に大別することができる。

3-1. 非イオン型 PBG

jiho_81-3-WPBG_01.png最もベーシックな PBG として、o-ニトロベンジルカルバメートがある。高分子中に PBG を導入することを可能にした重合性官能基のメタクリル基を有するタイプ(WPBG-165)は、短波長の吸収帯を有するためレジスト材料として最適である(図1)。


jiho_81-3-WPBG_02.pngアントラセン骨格を有するタイプ(WPBG-018)は、365 nm 付近まで感光域を有しており、高い耐熱性と良好な溶解性を示す。ベンジル位が開裂することでジエチルアミンが発生する(図2)。

エポキシを UV 硬化する際、PBG から発生するアミンが 1~2 級アミンの場合、化学量論的な反応であるためエポキシ 1 分子または 2 分子と架橋するが、連鎖的な反応は起こりにくい。一方、求核性の高いイミダゾールの場合は、加熱によって連鎖的な反応が可能となる。

アントラキノン骨格を有しイミダゾールが発生するタイプ(WPBG-140)は触媒的にエポキシ樹脂を硬化できる。PGMEA(プロピレングリコール 1-モノメチルエーテル 2-アセタート)溶液を用いたフォトパターニングの例を図 3 に示す。

jiho_81-3-WPBG_03.png

従来のカルバメート型 PBG の場合、塩基の発生に伴って炭酸ガスが発生するため、接着分野では気泡が問題となっていた。有光准教授が開発したクマル酸アミド骨格を持つタイプ(WPBG-027)は、光異性化でクマリン環を形成する際に塩基が発生するため、アウトガスがないことが特徴である(図4)。

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3-2. イオン型 PBG

これまでのイオン型 PBG は、発生できる塩基の種類に限界があった。有光准教授は、ケトプロフェンが迅速に光脱炭酸(φ313 = 0.78)することに着目し、種々のアミンと塩を形成することであらゆる種類の塩基を簡便に発生させることに成功している。これによって、従来は困難とされていたアミジン、グアニジン、ホスファゼンなどの有機強塩基の潜在化を達成している(図5)。

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また有光准教授は、UV 照射によって安息香酸誘導体が分子内で環状エステル化することを見出している。本機構を応用した WPBG-246 は、量子効率が良好であり、炭酸ガスの問題も解決できるタイプである(図6)。

jiho_81-3-WPBG_06.png

従来の PBG は、溶解性が乏しい粉体であることが多く、各種モノマーに直接溶解させることが困難であった。当社は、対カチオンに種々の改良を加えることで、液状タイプの新しい PBG の開発に成功している(近日発売予定)。架橋剤に多官能チオールを併用すれば、無溶剤条件下、室温数分で UV 硬化が可能となる。

4. おわりに

光塩基発生剤は各分野で基礎的な研究が開花しつつある。当社ではユーザーの多様なニーズに対応するため、さまざまな吸光団とアミンの組合せによる潜在化を検討し、一部では工業化も達成している。今後もますます、多様な用途への展開が期待される。

謝辞

本研究開発を行うにあたり、共同研究を実施していただいた東京理科大学・理工学部 有光准教授に謝意を表します。

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