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siyaku blog

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【テクニカルレポート】ヒト万能性幹細胞研究用試薬;未分化維持培地 StemSure® hPSC Medium Δ 及び蛍光標識未分化マーカーレクチン rBC2LCN (AiLecS1)

本記事は、和光純薬時報 Vol.82 No.1(2014年4月号)において、和光純薬工業 ライフサイエンス研究所 細胞生物センター 福田 雅和、吉居 華子が執筆したものです。

はじめに

再生医療の実現が望まれる昨今、幹細胞研究分野は目覚しい発展を遂げている。なかでも大きなブレイクスルーはヒト万能性幹細胞である胚性幹細胞(ES 細胞)及び人工多能性幹細胞(iPS 細胞)の樹立である。iPS 細胞は終末分化した体細胞から樹立できることから、ES 細胞樹立時に伴う受精卵破壊という倫理的問題を回避でき、また移植医療の高いハードルである拒絶反応も生じないという理由から、細胞移植医療の有望なソースとして期待されている。

ヒト万能性幹細胞は、発生学研究、誘導された組織細胞を用いた医薬品候補物質の安全性及び有効性の評価、疾患特異的 iPS 細胞を活用した病態解明や新薬スクリーニング、また将来的には細胞移植療法による再生医療への応用にも期待が集まっている。

当社では幹細胞培養関連研究用試薬として、幹細胞を用いた製品試験によりロット毎に品質管理を実施済みの StemSure® シリーズを上市してきた。これまでは主にマウス ES 細胞の未分化維持培養用の基礎培地、血清代替品、ディッシュコーティング剤、凍結保存溶液を上市した。

本稿では、ヒト万能性幹細胞(ES 細胞及び iPS 細胞)をターゲットとして開発し、アニマルフリー未分化維持培地 StemSure® hPSC Medium Δ (hPSC Medium Δ) 及び蛍光標識未分化マーカーレクチン rBC2LCN (AiLecS1) について紹介する。

安定したヒト万能性幹細胞の未分化維持培養

hPSC Medium Δ はヒト万能性幹細胞の未分化維持用の培地である(bFGF は不含であり、培地使用前に別途添加が必要である)。本培地は、再生医療研究をサポートすることを目的として、非ヒト病原体感染のリスクや移植細胞の免疫拒絶反応の増大を回避するため、無血清、無フィーダーかつ異種動物由来成分不含(ゼノフリー)、動物由来成分不含(アニマルフリー)としている。また毒物及び劇物取締法非該当である。さらに、より感度の高い実験系を構築する際の障害となりうるアルブミンを含まない低タンパク質培地である。

本培地の細胞増殖能は、他社の低タンパク質・ゼノフリー培地と比較して同程度である(図1A)。また細胞及びコロニーの形態は良好であり(図1B)、未分化マーカー(Oct3/4、Sox2、rBC2LCN)が陽性である(図1C、D)。

jiho_tech2_82-1_01.png

継代時に ROCK 阻害剤(Y-27632, コードNo.257-00511)を添加することにより本培地を用いてシングルセルで継代できる。また無フィーダー培養に馴化した細胞を hPSC Medium Δ に移行する際に、hPSC Medium Δ に馴化する必要がない。さらに、継代培養時に使用する他の試薬については、多様なディッシュコーティング剤(Matrigel®、iMatrix-511、Vitronectin)及び解離液(EDTA溶液、Accutase™、TrypLE™Express)を使用できることから、汎用性が高い(ただし、0.05% トリプシン溶液、CTK 溶液は使用できない)。

本培地の各成分濃度は非開示であるが、組成は研究者のニーズに応えるために開示する予定である。

簡便かつ安全なライブセルイメージング

rBC2LCN(AiLecS1)(上市済み、コードNo.029-180611),2)は、糖鎖Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc に特異的に結合するリコンビナントレクチンである。rBC2LCN はヒト万能性幹細胞表面に存在する糖鎖に結合するが体細胞表面に存在する糖鎖には結合しない。rBC2LCN は細胞毒性をほとんど示さないため、培養液中に添加し、細胞を生きたまま染色培養できる簡便かつ安全性の高いツールである。

jiho_tech2_82-1_02.pngFITC 標識 rBC2LCN (rBC2LCN-FITC) は、ヒト iPS 細胞の培養液に添加するだけで良好な染色像が得られる(図2)。rBC2LCN の結合性、特異性は、現在広く使用されているヒト ES/iPS 細胞表面マーカーである抗 Tra-1-60/81 抗体と同等以上である。rBC2LCN-FITC 染色は培養液を交換しても数日間持続し、また培養液交換のたびに rBC2LCN-FITC を添加することにより長期間観察できることから、ヒト iPS 細胞樹立時の観察やヒト ES/iPS 細胞の品質管理への利用が期待できる。

jiho_tech2_82-1_03.png実際に、rBC2LCN-FITC を用いてヒト iPS 細胞及びヒト正常二倍体線維芽細胞を染色し、フローサイトメトリーに供したところ、未分化であるヒト iPS 細胞と分化したヒト二倍体線維芽細胞とを明確に分離できた(図3)。この方法を応用して、分化誘導した細胞集団から、残存した未分化細胞を分離できる可能性が示され、今後、再生医療分野への応用が期待される。


現在 FITC の他に、Cy™3 領域蛍光色素及び Cy™5 領域蛍光色素で標識した rBC2LCN を開発中である。また、rBC2LCN で染色した細胞を培養しながら rBC2LCN を剥がすことができる試薬も開発中である。

参考文献

1) Onuma, Y., Tateno, H., Hirabayashi, J., Ito, Y. and Asashima, M. : Biochem. Biophys. Res. Commun., 431 (3), 524 (2013)
2) Tateno, H., Matsushima, A., Hiemori, K., Onuma, Y., Ito, Y., Hasehira, K., Nishimura, K., Ohtaka, M., Takayasu, S., Nakanishi, M., Ohnuma, K., Chan, T., Toyoda, M., Akutsu, H., Umezawa, A., Asashima, M. and Hirabayashi, J. : Stem Cells Transl. Med., 2 (4), 265 (2013).

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