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siyaku blog

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【テクニカルレポート】α-グルコシダーゼ活性阻害測定キットの開発

本記事は、和光純薬時報 Vol.85 No.1(2017年1月号)において、和光純薬工業 試薬化成品研究所 松井 泰子に執筆いただいたものです。

DIABETES_600.jpg

酵素活性を保証したα-グルコシダーゼ酵素を含む、「α-グルコシダーゼ活性阻害測定キット」(以下、キット)を開発した。別売りの「ラボアッセイグルコース」と組合せることで、食品などに含まれる成分のα-グルコシダーゼ阻害作用を測定することが可能である。
キット中のα-グルコシダーゼは二糖類(スクロース及びマルトース)を基質とした分解活性を保証しており、α-グルコシダーゼ阻害活性(IC50)値を測定するのに有用であると考えられる。以下に、開発経緯と特長を報告する。

1.開発の背景

近年、豊かな食生活の中で、動物性食品の摂取増加のみならず、偏食や過剰栄養も手伝って、糖尿病や肥満、脂質異常症などの生活習慣病、あるいはメタボリックシンドロームの進展が深刻さを増している1)
特に糖尿病の患者数は増加傾向にあり、平成24年の国民健康・栄養調査によると糖尿病が強く疑われる人は約950万人、糖尿病の可能性を否定できない人(予備軍)は約1,100万人と推定されている2)
糖尿病の臨床現場で用いられている糖尿病薬の一つにα-グルコシダーゼ阻害剤がある。α-グルコシダーゼはデンプンがアミラーゼにより分解されて生じるマルトースなどの二糖類を分解し、グルコースを生じさせ、血液中の血糖値を上昇させる。そのため、α-グルコシダーゼを阻害することは、生じるグルコース量を減らし、血糖値の上昇を抑制することができる。
現在、さまざまな植物よりα-グルコシダーゼ阻害物質が抽出され、血糖値の上昇を抑える食品への応用が精力的に検討されている。

これまで、α-グルコシダーゼ阻害物質についてIC50値を算出する手順についていくつか報告はあったが、測定キットなどの市販品はなかった。また、哺乳類小腸由来のα-グルコシダーゼの市販品が少なく、一部市販されている商品も活性値を保証していない製品であった。
このことから阻害活性を定量的かつ、再現性良く測定することは困難であった。このような背景の元、定量的にα-グルコシダーゼ活性阻害作用を測定できる分析用試薬の必要性が高まり、この度、キットの開発に至った。

2.開発までの経緯

jiho_tech_85-1_01.png「キット」の開発について記述する前に、IC50値算出のために別途使用する「ラボアッセイ™グルコース」について、その測定原理を示す(図1)。
ラボアッセイ™グルコースの測定原理:試料に発色液を作用させると、試料中のグルコースは発色試液中に含まれるムタロターゼの作用によりα型からβ型へ速やかに変換される。β-D-グルコースは、グルコースオキシダーゼ(GOD)の作用を受けて酸化され、同時に過酸化水素を生じる。
生成した過酸化水素は、共存するペルオキシダーゼ(POD)の作用により発色試液中のフェノールと4-アミノアンチピリンとを定量的に酸化縮合させ、赤色の色素を生成する。この赤色の吸光度を測定することにより、試料中のグルコース濃度を定量できる。

基質濃度の検討

本来GODはβ-D-グルコースにのみ反応するが、マルトースにも弱い特異性があるため、バックグラウンドを上昇させてしまい、適切に阻害作用を評価できないおそれがある。
そこで、IC50値を測定する上での最適なマルトース濃度を検討した。マルトースと発色試液を30分間反応した結果、18.5mmol/l以下の場合、ブランクの吸光度が0.1以下となったため、この18.5mmol/l以下を候補濃度として採用することとした(表1)(調液方法は図3参照)。

表1. マルトース濃度の検討

マルトース濃度(mmol/l) 0 7.4 18.5 37 74
吸光度(A505) 0.0.36 0.057 0.099 0.183 0.337

次に、マルトース18.5mmol/l以下で酵素反応性を調べた結果、2時間以上酵素活性を持続する基質濃度は18.5mmol/lであったため、最終的なマルトース濃度を18.5mmol/lとした(図2)。jiho_tech_85-1_02.png

酵素剤によるばらつき低減検討

キットに含まれる酵素剤はラット小腸由来刷子縁膜から採取し、遠心分離により最適な画分を取得した懸濁液である。粒子径が大きいとすぐに沈殿してしまい、測定者が採取するときに、測定値がばらつく原因になる。
そこで、キットに含まれる酵素剤はすぐに沈殿しないよう粒子径を小さくするための製造方法をとり、測定値がばらつかないようにした。表2に阻害剤としてアカルボースを用いて3回試験した結果を示す(調液方法は図3参照)。

表2. アカルボースのIC50

基質 IC50値(µg/ml) CV値(%)
マルトース 0.10 1.8
スクロース 1.28 0.9

3.キットプロトコール

「キット」中の基質(マルトース、スクロース)溶液に段階希釈した測定試料(α-グルコシダーゼ阻害物質)溶液及び同じく「キット」中のα-グルコシダーゼ懸濁液を添加し37℃で反応させた後、沸騰水浴中で過熱し反応を停止させ、遊離したグルコースを「ラボアッセイ™グルコース」を用いて定量し、測定試料のIC50値を算出する(図3)。jiho_tech_85-1_03.png

4.最後に

本キットの開発によりα-グルコシダーゼ阻害物質のIC50値測定が可能となった。今後、本キットがさまざまな機能性食品の開発や探索の一助となることを期待している。

参考文献

1) 森川敏生:科学研究費助成事業 研究成果報告書, 課題番号24590037, 研究期間2012~2014. "Search for new metabolic syndrome therapeutic candidates from Thai natural medicines"
2) 厚生労働省:平成24年国民健康・栄養調査報告(2012).

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